
(この記事は、前編・中編・後編の3本でお届けします。)
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。もうすっかり秋風が冷たい季節ですね。
季節の変わり目で、体調を崩されるお子さん方も増えています。皆さまも暖かくしてお過ごしください。
前回の私の記事では、お子さん自身の言葉と心の世界の広がりについて考えました。
それでは、今回は、お子さんが自分以外の人の「心の世界」について考えられるということについて考えていきたいと思います。
お子さんと関わっていて、「何だか意図がうまく伝わらない」と感じられたことはないでしょうか。
あるいは、「想像力が足りない気がする」、「返ってくる反応が的外れ」...もしかしたら、そんなふうに感じられた経験がある方もいるでしょうか。
自分以外の人が発する言葉や表現のその「意図」や、その発信について、「相手の視点」で考えることができるということには、段階的(年齢に応じた)な発達があると言われています。
(今回の記事は、「相手の意図」や「他者の視点がわかる」状態を、「どのように確かめるか」ということを中心とします。「ハウツー」をお伝えする記事ではないことをご了承ください。それについては、また別の機会に考えていきたいと思います。)
心について、まとまりとして考えられるようになること
心について「まとまりとして考えられる」とはどういうことでしょうか。
またそれが、「他者の意図や視点がわかる」ことと、どう関係するでしょうか。
私たちは普段、「物」と、「物ではない生きたもの」とを区別していますね。
さらには、「心」がある存在と、そうではない存在とを区別して認識しているかと思います。
物には物の決まり(物理の法則)があり、人間はそれを理解し「まとまりとして」考えていると言えます。
物について「まとまりとして考えられるようになること」とは、例えば以下のようなことです。
・物と物は接触しなければ動かない(物はひとりでに、勝手に動き出さない)。
・物はまとまりのままで動く(動いてもバラバラになるわけではない)。
・物は連続した経路で移動する(瞬間移動したりはしない)。
こうした基本的な物理の法則については、赤ちゃんも生まれながらにわかっている可能性があると指摘されています。それを「核となる知識」(コアノレッジ)と呼ぶそうです(Spelke, E. S., & Kinzler, K. 2007)
では、それが「心」の場合はどうでしょう。これは目に見えないので少し想像しづらいかもしれません。
まず、人が目の前の対象に「心」の存在を感じるかどうかということについては、一般的に二つの要素から考えられています。
一つは、「力を加えられなくても(自ら)進んで動き出す性質(自己推進性)」。
二つめは、「目標に合わせた行動のコントロール(目標志向性)」です。
人間は、それらによって、対象の「心」の認識について区別していると言われています(「子どもの社会的な心の発達」 林創 著, 金子書房, 2016年出版)。
では、その「心」を「まとまりとして」考えられるということは、どういうことでしょうか。
例えば、駅で同じところを行ったり来たりして困っているような人を見たら、「困っていそうだ」「迷っているのかもしれない」と推測するのではないでしょうか。
そこで、「この人は、この場所を行ったり来たりすることが好きなのだな」とは考えづらいです(もちろん、その人によるかもしれません)。
より極端な場合で例えるなら、誰かが目の前の人を急に叩くのを見たら理由はないが、「ただ叩いた」というふうには考えないのではないでしょうか。「叩く」という「行動」を引き起こした「心」で何が起こったかについて思いを馳せ始めるはずです。
心をまとまりとして考えられるということは、そうした、目にみえる「行動」の背景にある目に見えない「心の状態」と、「目にみえる行動」を、「連続的に結びついたまとまり」として考えられることだと言えます。
つまり、「自ら、目標を持ち、その意図に沿って動き出す(志向性のある)」もの(心を持っていそうな存在)の、行動だけではなく、その背景にある「心の状態」について考えられるということです。
それを、心理学の世界では「心の理論」と呼びます。
物が物理の法則に従って動くのに対して、人間は「心の理論」に従って動く存在だと言えます。
では、その「心の理論」が「わかっている」という状態を、人において、特に子どもにおいて、どのようにしてわかるのでしょうか?
子どもが、「この子は、目に見えるものの背景にある事柄がわかっているのか」あるいは、「自分とは違う人の視点から物事を考えられているのだろうか」ということについて、気になったこともあるのではないでしょうか。
どうすればそれが「できている」ということがわかるのかを次の記事で考えてみましょう。
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