学習塾ミチビキ

【スタッフのつぶやき vol.32】「相手の意図」や「他者の視点がわかる」ようになること【中編】

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(この記事は、前編・中編・後編の3本でお届けします。)

 

こんにちは!スタッフの渡辺です。この記事は▶︎【スタッフのつぶやき vol.31】「相手の意図」や「他者の視点がわかる」ようになること【前編】 - Michibikiゼミの続きの内容です。


 

前編では、「心の理論」とは、つまり、心をまとまりとして考え、ある行動と連続したもの、あるいは結びついたものとして考えられることだということを確認しました。

 

それでは、そうした「心の理論」が「わかっている」ということが、どうしたらわかるのでしょうか?

 

自分が見て知っているものと、相手が見て知っているもの

三つ山課題(three mountain problem)」という、子どもの心の発達を理解するために行われる実験をご存知でしょうか?

 

子どもに、色や形、大きさが異なる三つの山の前に座ってもらいます。

そして、(自分が座っている視点と)「別の視点からはどう見えるか」を尋ねます。

 

これを、6〜7歳より前の年齢の子に尋ねると自分が今座っている視点からの光景しか答えられないことが多いそうです。

けれど、ある程度の年齢になると、自分のいる位置とは異なる視点からの光景について答えられるようになります。

 

これは、「脱中心化」や、「自己中心性の克服」と呼ばれます。2〜6、7歳頃に発達するようです。

(自己中心性は「性格」についてではなく、視点の理解についてを指します。しばしば「わがまま」のように性格の話と勘違いされることもある概念です。)

 

別の視点から見た景色を、「自分の視点から見える光景」と同一のものとして答えるということを図にすると、以下のような状態です。

 

奥の赤い子の視点からは、一つの大きな山に遮られていて、手前の二つの山は見えません。

手前の緑の子には、手前の二つの山と、奥の大きな山の三つが見えます。

緑の子は、赤い子の視点からも「三つの山が見えている」と答えるような状態です。

(伝わるでしょうか)

 

これは、

・視点を移動すると、空間の中で見え方が変わることの理解

・他者が自分と異なる理解を持っている・異なる世界を見ているということへの理解

が、できているかどうか

をはかることができる実験だと言われています。

 

これについて「わかっている」ということに加えて、推しはかることができること、つまり他者の見ているものや世界についての「推測」ができるということが、「心の理論」(の理解)が獲得されている状態だと言えます。

 

自分とは異なる「他者の心」が独立して存在するということについての理解が「心の理論」であることについてここまで考えてきました。

ちなみに、「心の理論」は霊長類学者プレマック (Premack, D.)と言う人が1978年に提唱した物です。意外と最近のことのように感じられますね。

 

「心の理論」がわかっているかどうかが、どうやってわかるのか

心の理論がわかっているかどうかを調べる実験に、「サリーとアンの課題(Sally-Anne task)」という名前で知られるものがあります。

これは実験に出てくるキャラクターの名前から取られた通称です。実験自体の名前は、「誤信念課題(false belief tasks)と言います。

 

これは、自分は知っているが、他者は知らないという状況が提示された場合に、そのことを正しく理解できているかを調べる問題です。

 

手順は以下の通りです。

 

まず、子どもに一連の場面を提示します。

①サリーがビー玉を自分のカゴに入れてから、その場を立ち去るのを見せる。

②サリーがいない間に、アンがサリーのビー玉を自分の箱に隠す。

 

 

この二つの場面を見せた後で、

 

③「サリーが戻ってきたときに、サリーはビー玉がどこにあると考えているか

と尋ねる(Barron-Cohen, S. 1985 )。

 


3歳以前の子は、自分が目撃して知っている情報から、サリーがその場面を目撃していないということを含めずに「サリーは(アンがビー玉を移動させた)箱を探す」とこたえるそうです。 

4歳以降になると、その場面を目撃していないサリーの考えを含めて考え、「サリーは(ビー玉が移動されたことを知らないので、自分が入れた方の)カゴを探す」とこたえるようになるとか。 

 

この実験は、先に紹介した「三山課題」では、「6歳以降にならなければ『他者の視点をもち物事を考える力』は発達しないのだ」と述べられていたことを覆します。

 

類似した実験では、自分は見て知っているが他の子は知らないことについて、それを「他の子は知らない」ということを含めてこたえられるかどうかを調べる「スマーティ課題」というものもあります。

 

筆箱の中身を見せて、鉛筆ではなくスマーティ(チョコ菓子)が入っているのを見たAさんが、「他の子は筆箱の中に何が入っているとこたえるか」尋ねられ、どのようにこたえるかを調べる実験です。

もし、Aさんが「鉛筆」とこたえたら、「他の子の視点」がわかっているということになりますね。他の子は筆箱の中にお菓子が入っていることを知りません。

 

これらの実験には文化差もあり、日本の子だと、海外の子よりも正しくこたえられる時期が遅いようです。

 

しかし、こうした「サリーとアンの課題(誤信念課題)」のような実験でも、「他者の心について考えられる」力を確実に捉えてるとも言い切れないようです。

この実験に正しく答えられないということが、すなわち’’「心の理論」がわからない状態’’とも限らないかもしれません。

これはどういうことでしょうか?次回の記事で考えていきましょう。


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