学習塾ミチビキ

【スタッフのつぶやき vol.38】「わかっている」ことを、「行動にできる」こと①




こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。

 

12月も半ばを過ぎましたが、また日中の日差しが暖かくなってきましたね。

寒暖差を感じる日々の中です。皆さまどうぞお身体をお大事にお過ごしください。

 

この「心の理解」についてのテーマ記事では、「こんな時、この子をどうしたら良いか」のその前に、

こんな時、この子の中では何が起こっているのか」という、人間理解の基本的な知識に基づいた情報共有をしています。

 

「こうすれば...」というハウツー知識はもちろん役に立ちます。

しかし、その方法が、その子に合っているかどうかは、その子の中で何が起こっているかによって違うはず。

 

心についての基本的な知識を持っていることが、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。

 

前回までの内容では、「心の理論」、「メンタライジング」、「前頭前野」の各部位が担う役割、「実行機能」など、心の理解に関する専門的な内容が盛りだくさんでしたね。

前回までの記事▶︎

michibiki.hatenablog.jp

 

michibiki.hatenablog.jp

michibiki.hatenablog.jp

 

それではここから、こうした「心の力」が、日々の場面の中でどのように現れ、お子さん、あるいは私たちの反応や行動につながっているのか、具体的に考えていきましょう。

 

「わかっていて、行動ができる」ために必要なこと

これまでの内容ですでに触れたように、「他者の心を理解する」には

「頭で理解していること」

「理解しようと、積極的に向き合うこと」 の二つの側面があります。

 

そして、それを実際の行動に結びつけるには、前頭前野まとめて働くことで生まれる「実行機能」の役割が大きいと考えられています。

 

 

 

実行機能の働きの要素を小さく分けて考えることで、その行動が「なぜ」そうなのか、それでは「どうすれば」良いのか、心の理解から考えていきましょう。

 

そうした「仕組み」を知ることで、もし皆さんの中で思いついたアイディアがあったらぜひコメントでもお寄せください。

(今回の記事では、「なぜ」の部分、行動を担う機能の仕組みについての内容に留めています。)

 

「実行機能」の4つのポイントと具体的な場面

「実行機能」のが働くためには、以下4つの機能が鍵となります。

①ワーキングメモリ

②抑制

③更新

④切り替え(シフティング)

 

まずは、これらの機能が具体的にどの様な役割を担っているのか、具体的な場面とポイントに分けて見ていきましょう。

 

①ワーキングメモリ

ワーキングメモリは、「頭の中の作業台」とも呼ばれたりします。

頭の中で情報を保存しながら作業を進めたり、必要に応じて保存した情報を思い出し・組み合わせ・整理していく働きを担います。

 

【機能のプロセス】

・必要な情報を、頭の中に一時的に置いておく

・その情報を何度も思い出しながら、作業を続ける

・手がかりを増やしたり整理したりしながら、行動につなげる

 

【具体的な場面】例えば...

「先生から、『プリントの表面までが終わったら、算数ノートの5ページを開いてください』と指示が出た時。

やり方は理解しているし、聞いた内容も“その時”はわかっている。

でも、プリントの表面を終える頃には、次にやること(ノートを開くこと)が抜けてしまう。」

 

【目にみえる様子】

・指示されたことをすぐに忘れてしまう/何度も確認が必要

・作業の途中で流れが止まる

・つまずく理由が「理解」ではなく「覚えておく」部分にある

 

【ポイント】

「覚えておくこと」と、「作業すること」を同時に行うと、ワーキングメモリへの負荷が高まります。

この“覚えておく”ことの負荷が高いと、作業の途中で、指示の一部がこぼれ落ちてしまいやすくなります。

そのため、行動が途切れたり混乱したりもしやすくなると考えられます。


また、そのことが、周囲の目からは「聞いていない」「理解していない」ようにも見えてしまいやすいです。

しかし、そうした場合に、ワーキングメモリの機能のプロセスとして、一時的な“情報の保持”をしておくことに難しさがあるという可能性があります。

なので、スムーズに作業ができない時、その子が「聞いていない」「理解する力が足りない」とは、一概に判断できないと言えます。



これは、頭の中で「今扱う情報」を保持しながら操作する力です。

日々の生活では、目の前の課題や指示を覚えておくこと、途中で新しい情報が入ってきても、整理しながら何かを進めるといったことに関わります。

特に、小さな子どもや発達グレーゾーンの子では、覚えておくべきことを忘れてしまい、行動が止まったり、順序を間違えたりすることがあります。

 

②抑制

やりたいこと・思いついた行動・衝動的な反応を抑えて、いったん立ち止まる力です。

特に、気を引かれるような刺激があった時に、その刺激に対する反応を抑制することで、状況や場面に応じた行動を優先するといったことを指します。

 

【機能のプロセス】

・目の前の刺激に「反射的に」行動しそうになることを止める

・いったん立ち止まり、状況を確認する

・今必要な行動を選んで実行する



【具体的な場面】例えば...

「授業中、窓の外で何か気になる音がした。

気になって席を立って外を見たくなるが、授業中なので、“席を立ちたい衝動”を抑え

て、現在の行動(授業を聞くこと)を優先する。」

 

【目にみえる様子】

・気になるものにすぐ反応してしまう

・注意がそれて、行動が途切れやすい

・「わかっているのに」「つい」やってしまうように見える



【ポイント】

これは、「やってはいけないことをやめる」「衝動をおさえる」力です。

そうすることで、目の前の欲求や気持ちに流されず、状況に応じて適切に行動を選ぶことができます。

特に小さな子どもや発達の凹凸の大きいお子さんの場合、やりたいことがあるときに急に行動してしまったり、順序を守れなかったりすることがあります。

 

他にも、この抑制の機能のコストが大きい場合、

授業中に思いついたことをすぐ口に出してしまって止めるのが難しい、

触ってはいけないものに、気になって手を伸ばしてしまう、

「待つ」「順番を守る」などの行動コントロールの大変さ...

などのことが、具体的な行動として挙げられます。

 

この抑制がしづらいと、周囲の刺激に注意が持っていかれやすく、意図した行動を維持しにくくいです。

また、「衝動性」があるように見え、周囲からは「わざと」「ふざけている」とも見えやすく、誤解されやすいということがあります。

しかし、それも一概にその子の状況理解や意思、性格などの問題ではなく、「抑制を行うことそのもの」の負荷が高く、状況を見たうえでも、「その行動を止めておく」ためにかかるエネルギーが大きいために、行動の抑制が困難である可能性があります。

 


 

 

どうでしょうか。この二つの機能だけを見ても、生活や学習の場面や、日常の何気ないコミュニケーションの中でも、実行機能が働いていることによって成立している行動がたくさんあることが見えてこないでしょうか。

 

こうした日常の中での実行機能の役割 によって私たちは、

注意を切り替えて、

状況に応じた判断をし、

計画を立てて行動し、

自分や他者の気持ちに応じて柔軟に対応し、

目標に向かって行動を続ける

などといった高度なことができるようになっていると考えられます。 

 

逆に、実行機能がまだ発達段階にある場合、行動の途中で迷ったり、気持ちや状況に流されやすくなることもあります。

「待つ」「我慢する」といったことが、大人にとってよりも、小さな子にとっての方が難しいように、今回挙げた「抑制」など、ある機能の状態や具合によっては、それをすること自体が、本人の意思や努力の問題、以上にかかるエネルギーや負荷の大きい「大変なこと」である場合があります。

 

成長する道のりで自分で「頑張ろう」と考え、努力を重ねていくことは、どんな人にとっても価値のあることです。

しかし、「頑張ってなんとかする」の一辺倒では、子どもでも大人でも、やがて疲れ果ててしまいます。(筆者自身も、頑張るの一辺倒で疲れ果ててしまったことがあります)

 

その人の中の、「どこで」、「何が」困難さを生じさせているのかを見極め、環境を整えていくことで、「頑張る」コストを節約し、よりよく課題に取り組んでいくことができるかもしれません。

 

そうした環境調整は、Michibikiゼミが大切にしていることの一つでもあります。

こうした記事では、環境や方法の工夫の前提にある「なぜそうなのか」という仕組みについてまずはお伝えしていこうと思います。

 

長くなってきたので、実行機能の働きの要素である残りの二つの機能については次の記事で見ていきましょう。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます🌱

12月も残すところ半月、皆さまどうぞ、あたたかくしてお過ごしください❄️


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