
この記事では、お子さんの「行動」や「反応」、「学習」などの様子に関する
「なぜ?」「どうして?」について、
「人間の心の理解」という観点から、機能や仕組みの基本的な知識に基づいた情報を発信していきます。
目に見えない「心」について知ることが、
「この子の中で、何が起こっているのか」
「この子の世界には何が見えているのか」
について考える土台を持つことにつながります。
そしてその土台が、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。
前回までの記事▶︎
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。
2025年も残すところわずか、すっかり師走のムードですね。
今年の一年を振り返ったりもする時期でしょうか。
達成できたこと、できなかったことも様々にあるかもしれません。
この一年を歩んできた方それぞれ、みなさまご自身、お子さんたちのことををまずはたくさん労り、褒めてあげてください。
そして、心と体に向き合い、深く息を吸って、休息を取ったり、自分を癒したりすることも、ぜひ大切にしてみてください。
今回のこの記事では、これまでの心の理解に関する前提知識を踏まえて、
何かを行う力、「実行機能」を中心に考えていきます。
前回までの記事では、何かを「することができる」機能が、脳のどこで、どのようなプロセスで行われているのかを少しずつ見てきました。
それでは、それができない時、私たちの心では何が起こっているのでしょうか。
「何かをすることができない」その理由にもまた、様々な可能性が潜んでいます。
心は目に見えないものだからです。
背景にある理由を見立てることで、その理由に適した対処やケアをしていくことに、この記事が役立つかもしれません。
それでは、「何かをする」ということが、「どうしてかできない」とき、何がハードルになっているのか、いくつかの可能性について見ていきましょう。
何かを「することができない」のはどうしてか
これまでの記事で見てきたように、何かをやると決めてそれを行動にするための
「実行機能」は、高度に発達した脳の前頭前野という部分で、「それぞれの役割を持った複数の部分」が協働することで、現実の行動を調整していく機能を働かせています。
ですから、どこかで何かの負荷がかかると、実行機能はうまく働くことができなくなります。
では、そうした実行機能の働きを妨げる「負荷」にはどのようなものがあるのでしょうか。
それらのことついて、大きく二つに「外部の要因が心に影響してかかる負荷」と、「内側の要因が影響している負荷」とに分けて考えていきましょう。
まず、はじめに、「外側の要因が心に影響してかかる負荷」の方から見ていきましょう。
① 「ストレス」に対する「反応」によって、脳の「優先順位」が変わっている場合
非常に強いストレスや、慢性的な(ずっと続く)不安、緊張した状態が続くと、脳はそのために、「生き延びる」選択を優先します。
これは生物としてとても大切な機能です。
しかし、「生き延びる」ためにエネルギーを使うことを脳神経系が優先していると、計画や集中、切り替えといった、実行機能を担当する前頭前野が力を発揮できなくなることもあります。
そうすると、これから
「何をするか」定め、
「行動の段取り」を組み、
「計画」し、「実行」する
という一連の心の余裕が追いやられ、目の前のことで精一杯になってしまうでしょう。
そうした状況の場合に目に見える様子として、例えば、
不安を「予期」することで、予定に取りかかる前に疲れ切ってしまったり、
突然に不安が湧いてきて、動けなくなってしまう。
何かをしていても、気持ちが落ち着かなくて注意が散りやすくなる...
といった様子が見られるならば、ストレスの影響が大きく「何かを実行する」ということが難しくなっている可能性も考えられます。
ストレスが背景にあると考えられる、そんな時は、
・「どんな時に」うまくできないか、緊張するかを思い返す
・「ストレスになっている」ものが何かを見つける
・「ストレスの要因」を、どうしたら減らせるかを検討し、取り除けるものは取り除く
・「休息」について検討し、方法や時間、頻度を調整する。
といった対処が考えられますね。
また、自分が「安心できる方法」「リラックスできるもの」「癒されるもの」などの選択肢を多く知っていることも大切なことです。
例えば筆者の場合は、ストレスに気がついたら、「深呼吸」や「ストレッチ」、「運動」など、物理的に体に働きかけたり動かしたりすることが、安心できたり、気持ちを軽くすることに役立ちます。
それから、
何かを「すること」のハードルを下げて、「小さなステップ」に分解して、負荷(ストレス)を下げる
といったことも、優先的に取り組める対処法になります。
お子さんは、まだ未発達な心と身体で日々たくさんの出来事や情報から刺激を受けています。
その大変さは大人になると、中々見えなくなってしまうものでもあります。
どんな人も、そうした子どもの頃の大変さを少しずつ乗り越えて大きくなってきたのではないでしょうか。
ご家庭の中で、学校で、お子さんの心のうちで抱えているストレスに目を向けることも、「何かを行動に移す」ことのハードルを超えていく一つの糸口になるかもしれません。
② 「身体」の状態に目をむけるー睡眠不足・疲労・栄養不足、体質などー
身体の「エネルギー状態」、つまり元気があるかどうかは、そのまま実行機能の働きに影響します。
先に考えた背景の一つの「ストレス」も、身体のことにも含まれますね。
人間の「脳(心)の機能」は、身体の機能と同じように、たくさんのエネルギーを必要とします。
特に、
・睡眠時間の不足
・慢性的な疲労
・血糖値の乱れ
などは、実行機能の要素である、「ワーキングメモリ」や「抑制」の働きに非常に大きく影響します。
身体にそうした状況がある時、例えば、
些細な刺激で気が散る(抑制の機能の低下)
日々の予定を覚えておくことができない(ワーキングメモリのパフォーマンス低下)
「やらなきゃ」と思うだけで力尽きる(慢性的な疲労による更新や切り替えの負担の増加)
といった様子も見えやすくなります。そうした場合、「身体」の調子が、「何かを行動に移せない」ことの背景として考えられます。
そんな時は、
・日々の「眠る時間」と「起きる時間」を記録し、バラ付きがないか、睡眠時間は足りているか
・食事の時間や規則性にバラ付きがないか
・食事の内容はどうか(糖分や塩分の偏りがないか、量が少なすぎたり多すぎたりしないか、市販食品や刺激物の量 など)
・1日の中で休息をしているか
・何に時間を使い、何で疲れているか。日々どの程度疲労が溜まっているか
といった、基本的な生活内容を振り返り、もし改善できるところがあれば、工夫して改善するということができます。
筆者も、生活を振り返り、身体の状態につながる睡眠や行動に関する習慣を記録することを、日々実践しています。
これは自分と向き合うことで自分の心や体を大切なものとして考え、コントロールしていくことを「意識する」ことにもつながっていきます。
また、
・特に朝など、日々の行動を決め、“同じ順番”に固定することで負荷を減らす
など、意思決定の量を減らすといったことも、心身の疲労を溜めない工夫の一つですね。
お子さんの心と体は、かけがえのない大切なものです。
こうした身体の健康の土台に問題がある場合は、
まずは、身体のSOSに気づいてあげることで、
ふさわしい必要なケアをしていくことが、
「頑張る」「注意する」「認知的なサポートをする」といったことよりも、
まずは優先的な対処となるでしょう。
③ 周囲にある情報の量、環境の刺激(ノイズ)ー音や視覚の刺激・散らかった空間・他者の会話などー
人間の脳は目の前のことだけではなく、常にその周辺にある情報も処理することで、
様々な行動の調整や意思決定を行う「実行機能」の「容量」を消費します。
スマートフォンやパソコンが、今開いているアプリケーションの裏でも様々な機能を同時進行させていると、段々と熱を持って動きづらくなってくることを想像するとわかりやすいかもしれません。
様々な情報を同時に受け取り、行動がうまくいかない時、例えば...
・片付いていない部屋やざわつきのある空間だと集中ができない
・同時に複数の情報や刺激があると、「フリーズ」したような状態になる
・次に何をしたら良いのかの判断がつきづらくなる(ワーキングメモリの容量不足)
といった様子が見られるかもしれません。
そんな時、
・空間の「物理的」な刺激を減らす。仕切りで視覚情報を隠す
周辺を整理整頓し、静かな空間を確保することで、脳がキャッチする情報を減らします。
・何かを実行する場所を「目的別」に分けて、切り替えや決定の負荷を減らす。
・何かをするために必要な「導線」を見直し、整理する
といった、物理的な環境を整えるという工夫をすることで、脳が使う不必要なコストを削減できると考えられます。
勉強に限らず、生活空間の中で、「この場所で何をするか」という、空間の中で目的とそのための道具が整っているかどうかということは、意外とエネルギーの消費に関わります。
筆者も部屋を整頓することで、タスクの効率やリズムが改善された経験があります。
特に、その環境からの影響の受けやすさには、その人ごとの特性や、感受性の程度によっても差があります。
近年では感覚が鋭い人を「HSP(:Highly Sensitive Person)」などと呼称することがありますね。
感受性が強いこと、環境や周囲の情報を細かく受け取れることは、他の人が気が付かないことに気がつくことができるということでもあり、優れた個性でもあります。
しかし、それによって、何かをするために必要なエネルギーや余裕がなくなってしまうこともあります。
筆者の私自身も、周囲で起こることについて、「感じすぎ」「考えすぎ」で疲れ切ってしまうということが多々あるタイプです。
環境調整は、外的な環境にある負担を減らし、本人の負担は少なく、工夫できる、一つの即効性のある方法だと言えます。
人間の「仕組み」や「構造」とその「機能」から考える
・何かを実行する
・行動を増やす
・あるいは、できるように「頑張る」
などの前に、人間の行動の背景にあるものを理解し、“脳がよりよく働ける前提”を作り出すことは、日々働いている様々な人間の「機能」の構造から考えて、合理的なことだと言えます。
「環境を変える」力があるということが、人間の一つの特徴であると言われたりしますね。
こうした観点で問題を見ていけば、実行機能が「うまく働かない」のは、努力や意志だけの問題ではなく、
・ストレス
・身体の状態
・環境の負荷
などが、脳が処理できる範囲を超えた結果であると言うこともできるでしょう。
何かがうまくいかない時、心などの目に見えないものについて考えさせられる、それはもしかすると、少しモヤモヤとさせられる要求かもしれません。
だからこそ、何かができない時、「『できない』ということそのもの」を問題視し、それを変えようとして試行錯誤して疲弊してしまうということも起こりやすいですね。
心の背景にあるものは、必ずしも単純明快なものではないかもしれません。
複数の事柄が絡み合い、折り重なり、ユニークな様子を見せるのが「心」です。
だからこそ、目に見えない心の中で、「複数のこと」が、「同時に」影響しているということを前提に据え置き、
背景にある理由についての可能性を項目立てし、小さく「分けて(区別して)」考えていくこで、
「見えない、モヤモヤしたもの」について考えていた、コスト(負担)をある程度は減らすことができるという効果もあります。
そうすることで、問題を「対象化」「意識化」し、少し切り離して考えることもできますね。
週の始まりです。今週、ぜひ自分の心と体の声に耳を傾けつつ過ごしてみてはいかがでしょうか。
今日は日差しのある日中から、風の吹く午後となりましたね。
夕方からは冬らしく冷えますので、皆様どうぞ暖かくお過ごしください。
この記事では、「外部の要因が心に影響してかかる負荷」について見てきました。
次回の記事では「内側の要因が影響している負荷」例えば発達特性、感情の処理、トラウマ、過去の学習経験などが背景にあることで実行機能がうまく働かないと考えられる状態について考えていきます。
それでは、次回記事に続きます📝
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無理して学校に行かせたくない。将来の選択肢をまもってあげたい。
どちらも、おなじくらい大事だと思うから。
Michibikiゼミは、自立支援と進学支援のハイブリット型学習塾。
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