
この「心の理解」についてのテーマ記事では、「こんな時、この子をどうしたら良いか」のその前に、
「こんな時、この子の中では何が起こっているのか」という、人間理解の基本的な知識に基づいた情報共有をしています。
「こうすれば...」というハウツー知識はもちろん役に立ちます。
しかし、その方法が、その子に合っているかどうかは、その子の中で何が起こっているかによって違うはず。
心についての基本的な知識を持っていることが、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。
前回までの振り返り
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。
段々と2025年も終わりのカウントダウンが近づいてきましたね。
皆さま、冬休みの真っ只中でしょうか。
前回までの記事で、「何かをしたいのに、『することができない』理由」について、「心の内側の『不安や恐怖、愛着の問題』が影響している可能性」について見てきました。
前回までの記事▶︎
それでは続けて、「何かをすることができない」時、目に見えない心の内側で起こっていることについて考えられる可能性と、その時できることについて見ていきましょう。
これから見ていく内容の多くも、「経験」が不安感やストレス、不快な記憶と結びつくことで起こる事柄です。
その中でも、「心の機能」としての特徴的な状態について見ていきたいと思います。
過去の経験による、「学習性」のストップ
強い叱責、過剰な管理、失敗への強い罰などを経験した子は、「考える前に固まる」「どうせできない」「自分が何をしても無駄」といった反応が「自動」で起こるようになることがあります。
また、「予測できない、不条理な状況」が続くことも、そうした反応を引き起こします。
これも前回の記事で紹介した「学習性無力感」の一つと言えます。
そうすると、例えば...
自信の低下によって、実行機能(意思を持った行動)が働く前にあきらめる
何を選んでいいかわからない
課題に向かう前から、疲労感が先にやってくる
といった状態が起こりやすくなります。
そんな時、
前回までの記事で挙げたような、「失敗しづらい条件」「予測可能な状況」「価値判断で評価されない(過程を意識する)」といったことも有効です。
その他にも、「自分が無力な感じ」が強い場合は次のようなことも、大人が関わりの中でできることです。
「選択の負担」を軽くすること
「自分が無力な感じ」が強い時は、「自分で決めていいよ」「どれにする?」という問いかけ自体も、強いプレッシャーとなってしまいやすいです。
それは過去の経験から「選んだ結果、失敗した」「選択を間違えて不快なことが起こった」
ということを学習することで、無力な感覚は強まるからです。
ですから、そんな時は
・最初は、大人が選択肢を一つに絞る。あるいは選択が必要な場面では、二択までに限定する
・「今日はこれを一緒にやろうね」と、決定を肩代わりする
といったことで、負担を減らすことができます。
それをずっと続けるわけではないのですが、もし、「自分が何かをすること」に、心の負荷が強まる経験が強く結びついているときは、「選ばなくていい」「間違えても責任を取らされることがない」という「安心」の経験をまずは回復させることが必要です。
大人が「待つ」こと
「学習性」にストップが起きている時、「反応」すること自体も遅くなりやすいです。
その遅さや沈黙が、周囲からは「やる気がない」というふうにも見えてしまいやすいです。
しかしそこで急かされると、「ストップ」が強化されることもあります。
「早くしなさい」とつい言いたくなってしまうのですが、そんな時、大人にできる工夫についても考えてみましょう。
例えば、
・反応までの時間を長めに取る
・沈黙している時間をその子が「考えている時間」として見て扱う
・動けないときは介入しすぎない。そばにいて見守る
そうした大人の「待つ姿勢」が、「急かされない」「見捨てられない」という「安心感」を回復させる体験となり、「学習をストップさせる」体験を少しずつやわらげることにもつながるかもしれません。
こうした学習性のストップは体験から得る認知の“癖”でもあります。
ですから、新しい体験を通して、認知の癖を変えていけるという可能性があります。
情緒的エネルギーの不足(無気力・燃え尽き・慢性的な疲労)
「感情的なエネルギー」も、実行機能が活動するためには必要です。
単純に「元気」がないと、どんなことをするのにも大変な感じがしてしまうということです。
これはやる気の問題ではなく、動き出すための「燃料」が不足している状態なので、補う必要があります。
こうした状態は、落ち込みや抑うつ状態にもつながる、心のSOS状態です。
例えば、
・興味や意欲が湧かない
・刺激に反応できない(反応が薄い)
・何をしても疲れる
・集中の持続が極端に短い
特にこれらのことが、「以前までと比べて」見られる場合は、まずは休養を優先しましょう。
そんな時、
・休息を“予定に組み込む”ことで、確実に休めるように設定すること
・「達成。完了感」のある小さなタスクをはじめに行う
・「何もしない時間」を回復に必要な時間として設ける
これは、「回復」をしなければ改善しない種類のものでもありますが、
これまでに見てきた、
・ストレスや環境などの“外側の負荷”
・不安・特性・過去の経験などの“内側の要因”
が重なり合って起こることでもあります。
ここまで見てきたように、様子で見れば「行動ができない」ということの背景にもさまざまな可能性があります
心と体、どの水準で負荷がかかり、どのプロセスにハードルがあるのかを見立てられることは、より効果的な対処や介入をしていくことにも繋がります。
それでは次の記事で、「神経基盤」の特性が背景にある、行動(実行機能)のハードルについても考えていきましょう。
年の瀬、どうか皆さま穏やかにお過ごし下さい
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