
この「心の理解」についてのテーマ記事では、
「こんな時、この子をどうしたら良いか」のその前に、
「こんな時、この子の中では何が起こっているのか」という、
人間理解の基本的な知識に基づいた情報共有をしています。
「こうすれば...」というハウツー知識はもちろん役に立ちます。
しかし、その方法が、その子に合っているかどうかは、その子の中で何が起こっているかによって違うはず。
心についての基本的な知識を持っていることが、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。
前回の振り返り
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。
前回までの記事では、「心の内側で起こっていること」が、何か行動をすることの妨げになっている場合の、さまざまな可能性について見てきましたね。
ここから、そうした行動の実行に関わる、「神経基盤の特性」が背景にある場合について考えていきましょう。
前回までの記事▶︎
神経基盤の特性で、受け取る情報の「扱い方」に特徴がある場合
ここまで、行動を妨げるものについて、心の内側で起こっていることについて、
主に「経験」や「学習」、「ストレスや疲労」などの側面から見てきました。
次に、神経基盤の特性によって、「情報の扱い方の特徴」が、何かを実行することの妨げになっている場合について見ていきたいと思います。
これまでの記事の中で、実行機能の働きを担う「前頭連合野」には、
「ワーキングメモリ」や「抑制」、「更新」、「切り替え(シフティング)」などの機能があることを見てきましたね。
神経基盤の特性が関わる場合は、そうした、何かを実行するための機能が動く「回路」が特徴的であったり、必要な「コスト」が大きかったり、不足しているということもあります。
それはつまり、何かを行なったり考えるために必要な、(脳が同時に扱える)情報の容量や、情報を制御するために必要なコストが高いということになります。
それが、表面的に「やる気が出ない」「頑張れない」といった様子に見えたりします。
では、そうした場合に現れやすい、目にみえる様子について考えていきましょう。
情報が「一度に入る」とフリーズする
複数の指示、要素などを同時に手渡されると、頭の中の作業台、「ワーキングメモリ」が容量を超えてしまいます。
すると、処理の限界を超えてしまうので、思考や行動が止まることがあります。
例えば、
・何かを説明している途中でフリーズしたような様子になる
・最初の指示は覚えているが、後半が抜けている
・まず何から手をつけてよいかわからなくなる
こうした場合、大人の対応で工夫できることも比較的多くあります。
そんな時、
・指示は「一度に一つずつ」手渡すこと
・手順は、バラバラではなく順番に手渡すこと
・「見本」や「チェックリスト」などを作成し、情報や記憶を外部に預けられるツールを活用すること
など、これらのことは大人が作業する時にも処理の負担を減らせる工夫でもあります。
筆者自身も、ワーキングメモリの負担を減らす工夫として自分自身の作業の中でこうしたことを実践しています。
次に、抑制の機能にハードルがある場合についても考えて見ましょう。
注意が他のものに引きずられる
「抑制」の機能である、「必要のない刺激」を遮断することにかかるコストが大きいと
例えば、
・周囲の音や動きにすぐ注意が逸れる
・気になることがあると作業に戻れない
・思いついたことを止められない
といった様子が見えやすくなります。これらは、以前の記事の中で実行機能の働きについて詳しく説明した内容の中でも触れたことですね。
そんな時、
・物理的刺激を減らす(席・配置・視界など)
・作業の時間を短く区切る
・「ここまでできたら完了」など、小さく区切ったステップやマイルストーンを言葉にして見える化、意識化する
・「今はこれだけ」といったことを、言葉ではっきりと示す
といったことで、集中を持続し、「小さな」抑制の練習をしていくことができます。
また、この「反応の抑制」は筋肉のように、ちょっとした遊びや作業の中で鍛えることもできると言われています。
実行機能をトレーニングすることに繋がる遊びや作業人ついても、また別の記事でお届けしていこうと思います。
行動の切り替えに時間がかかる
前頭前野の「切り替えの回路」にコストがかかると、行動や思考の転換にもそれなりに時間が必要になります。
例えば、
・一度始めたことをやめられない
・次の課題に移るときに固まってしまう
・突然の予定変更が起こると動けない
といった様子は、この切り替えにコストがかかっている可能性があります。
そんな時、
・事前の予告を入れること
・「終了」と「開始」の合図を明確にする
・ルーティンを固定する
といった、これまでにも見てきた「予測できる環境」を作ることが一つ有効な方法になります。
「神経基盤」が背景にある実行機能のハードル
何かの行動や課題を「実行できない」と、本人の意思や理解が不足しているとも見られてしまいやすいです。
しかし、神経基盤の特性が関係している場合、行為や課題を処理をするための「心の設計」とに対して、「課題の出し方」つまり情報提示の方法が合っていないという見方もできます。
ですから、ここまで見てきたように、大人は
・情報量を減らす、順番に提示する
・複数の事柄を同時に処理させない
・「切り替え」に必要な時間を想定する
・行動に必要な情報などを、メモなどの道具を活用し「外部化」する
といった、心の負荷を下げる条件設定を工夫することもできます。
どんな子にも、背景にある「理由」に合った「方法」を
ここまで見てきてどうでしたでしょうか。
長きに渡ってお届けしましたが、実際にお子さんの心の中で起こっていること、またそれぞれの持つ特徴は、さらに多様で個別のものです。
実際に関わり、見守る中でしか見えてこないこともたくさんあります。
それに、お子さんが「行動する」ということが難しい時、大人も焦ったり、つい苛立ってしまうこともあるかもしれません。
そんな時、「知識」や「例」を蓄えておくことは、そうしたときに一歩引いて、目の前のことと対処の間で一呼吸おくクッションのようなものとしても役立ちます。
焦らず、責めず、なるべく心を軽くして、前向きに課題をクリアしていくための栄養としての知識として「心について」の話をお届けすることができたら幸いです。
Michibikiゼミの学習サポートでは、そうした知識と経験に基づいて「前向きに」、その子にあった方法を一人一人と向き合いながら考えて参ります。
ここまで、心の「知識」や「理論」についての内容をお届けしてきました。
それは「実践できること」へのスタートダッシュのようなものとしても役に立ちます。
年始からは、ここまで見てきた「実行機能」を部分で見ながら、それらを使って活性化させる方法についての記事をお届けしていきます✉️
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
またこの一年、皆さまお疲れ様です。
どうぞ、良いお年をお過ごしください。
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無理して学校に行かせたくない。将来の選択肢をまもってあげたい。
どちらも、おなじくらい大事だと思うから。
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