
この記事では、お子さんの「行動」や「反応」、「学習」などの様子に関する
「なぜ?」「どうして?」について、
「人間の心の理解」という観点から、機能や仕組みの基本的な知識に基づいた情報を発信していきます。
目に見えない「心」について知ることは、
「この子の中で、何が起こっているのか」
「この子の世界には何が見えているのか」
について考える土台を持つことにもつながります。
そしてその土台が、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。
前回の投稿から1週間空いてしまいましたが、皆さま、いかがお過ごしでしょう。
1月も最終週となりました。テストや受験のシーズンでもありますね。
肩の力を抜いて、休める時は休んで、ほどほどに進んでいきましょう☕️
さて前回までの記事では、「実行機能」という脳の働きの中の一つである
「ワーキングメモリ」の機能の中から、
「聞いたことを覚えておいて、また取り出す」、言語性の機能である「音韻ループ」という機能と、
「見たものを覚えておいて、参照しながら作業する」、視空間性の機能である「視空間スケッチパッド」という機能を活性化させる遊びや作業について考え、例えばどういったものがあるのか順番に見てきました。
前回までの記事▶︎
前頭前野、実行機能、ワーキングメモリのおさらい
ここで、ワーキングメモリについても少しおさらいしてみましょう🔍
以前の記事で見てきた「前頭前野」のうち、「背外側部」というところが、ワーキングメモリとの関連が大きいと考えられています。

まず、「ワーキングメモリ」とは、簡単に言えば「記憶力」にあたります。
記憶には、「短期的な記憶」と「長期的な記憶」の2種類があります。
ワーキングメモリは、「頭の中の作業台」とも呼ばれ、何か作業をしながら、必要な情報を保存し置いておいて、また必要な時に取り出す、まさに記憶の作業台のような役割を担います。
長期的な記憶と、今ある情報を組み合わせて使うために、「 短期的な記憶」を保持するところだと言えますね。
ワーキングメモリは、よくこのような図式で表されます。

(Baddeley's model of Working Memory:Michibikiゼミ作成)
ではここから、
・「過去の経験の記憶(長期記憶)」 と
・「今の記憶(短期記憶)」を結びつける機能を担う
「エピソードバッファ(またはエピソーディックバッファ)」という機能と、
これまでに見てきた「音韻ループ」や「視空間スケッチパッド」、「過去の経験の記憶」などから参照した情報をまとめて調整する役割を果たす、「中央実行系」の機能についても少し考えながら、それらを積極的に使うことで活性化させることができるような遊びや作業について見ていきましょう🔍
「エピソードバッファ」 どこの、どんな機能?
「エピソードバッファ」は、「過去の経験や記憶」と「今起きていること」とを結びつける働きをします。
「エピソード」は、物語や出来事にまつわる話のこと、
「バッファー」は、調整のためのゆとりや余裕、また「一時的な記憶領域」を指しますね。

このエピソードバッファが機能することで、過去に経験したことを記憶の中でエピソードとして参照し、今ある情報と結びつけながら表現したり、行動したり、何かを説明したりといった、「過去に身につけた知識を思い出しながら」作業を行うといったことができます。
そのことによって、何かを見たり聞いたりした時に、
「前にもあったな」
「なんか知っているな」
「あの時と似ているな」
と気がつくこともできます。
この「エピソードバッファ」、具体的にどういった作業、あるいは遊びの中で使い、活性化されるでしょうか?
ここまでに確認した、
「過去の出来事を思い出しながら」「今の感覚と統合する」といった機能から考えてみましょう。

エピソードバッファを育てる遊び・作業
ー今ある情報と、これまでの経験の記憶をつなぐー
まずは、身近な「遊び」から考えてみましょう。
①ごっこ遊び
代表的なものが「ごっこ遊び」です。
少し小さい子向けかもしれないですが、なぜごっこ遊びが「エピソードバッファ」を使うのに良いのか考えてみましょう。
これまでに体験したことをもとに、架空の役割や場面を演じるのがごっこ遊びですね。
あるいは、本当は異なる物体や道具を、何か別のものに見立てて遊んだりもします。
例えば、そうした見立て遊びでは、積み木を「パン」や「スマホ(電話)」に見立てたり、新聞紙を「帽子」や「剣」に見立てたりもできます。
ポイントは、大人が「それは何?」「どうやって使うの?」と問いかけて、それが何のつもりなのか、子どもの世界での設定を言葉で説明してもらうことです。
そうする時、頭の中で、「これまでの記憶や知識(長期的な記憶)」を呼び起こしながら、「目の前にあるもの(視覚や言語の情報)」と組み合わせて関連づけながら考えるという作業をします。
これはまさに、ワーキングメモリの中の「短期的な記憶」や「視覚・言語の情報」と、「過去の長期的(に保存されている)記憶」をつなげて、何か新しいことを考えていく練習にもなります。
何気なく行う頭の中のプロセスを言葉にして考えてみると、これらのことは学習でも日常コミュニケーションでも役に立っている機能ですね。
さらに、ごっこ遊びには、
「役割を交換する」
「誰かになりきって演じる」
といった遊び方もありますね。
その中では、子どもが大人役をしたり、あるいは他の動物やキャラクターになりきったりします。
そうしたごっこ遊びの時、あえてその役に応じた質問をします。
「先生(役の子どもに)、今日は何をしますか?」
「猫さん(役の子どもに)、どこへ行くの?」
といった質問をしてやりとり(ロールプレイング)をするといった調子です。
そうすると、見立て遊びのように記憶の参照と現在の情報の繋がりを作るだけではなく、遊びの中で「本物の自分」としての行動パターンが一時的に「抑制」もされます。
そして、選択的に架空の応答や反応を形成します。
これには、エピソードバッファでの「記憶の呼び起こし」や、「統合」と同時に、以前の実行機能についての内容で見た「抑制」の機能も同時に使う必要があります。
この後で見る「中央実行系」の働きによって、この抑制が行われることで、行動を調整し、「誰かや、何かになりきる」という遊びの形を成り立たせます。
もしかすると、大きくなると、「ごっこ遊び」はあまりしなくなるかもしれませんね。
けれど日常の中で、ちょっと何かを演じてみたり、「◯◯係り」など、役割を割り振ってロールプレイをしてみるといったことはできそうですね。
「立場が人の振る舞いを決める」といったことも、立場や役割によって自分の衝動や反応が一時抑制されるからなのかもしれませんね。
② お話の続きを作る(連想遊び)
ある「絵」や「写真」などの視覚情報とキーワードなどの言語情報から、何かを自由に連想して、新しい物語(エピソード)を即興で作る遊びです。
「連想」で「お話を作る」遊びは、ごっこ遊びよりは、経験したことのある人がもしかしたら少ないかもしれません。
代表的な連想ゲームといえば「マジカルバナナ」ですね。
そちらは遊んだことがある人が多いかもしれません。筆者も大好きな、楽しく頭の中が刺激される遊びです。
「マジカルバナナ」は、「知っている言葉(長期的な記憶)」と「今きいた言葉(短期的な記憶)」をそれぞれに想起しながら行う、主に言語性の記憶を活性化させる遊びだと言えます。
「お話の続きを作る」という作業では、連想した言葉を連ねるだけではなく、それを物語、つまり「エピソード」として組み立てる作業を行います。
そうすると、頭の中では「過去の経験や知識(長期記憶)」を参照することで、「新しい物語」を組み立てます。
また、その物語の流れを自然な矛盾のないものとして成立させることにも、「意味のあるエピソードとしてまとめる」というように、頭を使います。
紙芝居を見ながら、お話を自分で作ってみても楽しそうですね。
また、「物語」だと少し難しいというとき、「絵」と「言葉」をつなげる遊びもあります。
「Dixit(ディクシット)」というボードゲームをご存知でしょうか?ボードゲームがお好きな方はもしかするとご存知かもしれません。

様々な不思議な絵が描かれたカードをそれぞれに持ち、カードの絵を見て思い浮かんだ「言葉」を連想し発表します。
絵と言葉の組み合わせは、自分以外の人には内緒です。
カードをみんなに見せて、どの絵のカードが、持ち主の発表した「言葉」とセットになったカードなのかを当てます。
参考:我が家の宝物【Dixit】!5歳の子どもと初めて遊んだ感想
このボードゲーム「Dixit」も、大人数で遊べて、大人の筆者も大好きなゲームです。
ボードゲームにも、実は頭を使いながら他の人と一緒に楽しみつつ、コミュニケーションの練習にもなるようなゲームがたくさんあります。
週末や休日に、お友だち同士やご家族で遊んでみるのもいいですね。
また、遊びではなくても、日々の中でできる作業としても、「エピソードバッファ」を活性化させるような作業がいくつか考えられます。
それではルーティーンワーク(習慣)やちょっとした作業としてのエピソードバッファの活用についても見ていきましょう🔍
① 感覚想起日記(「あの時、どう感じた?」ワーク)
今日1日のことでも良いので、過去の出来事(長期記憶)を思い起こしながら、その時に「感じたこと」を、今の感覚と言語に結びつけていくという作業も、何かを
「思い起こす」
「そのことに紐付けて言葉を連想する」
「それらを繋げる」
といったプロセスによって、頭の中が活性化されます。
例えば、 どこかに出かけた後や、学校から帰ってきた後などに、
「何があった?」
「どんなものを見たり聞いたりした?」
「それはどんなふうだった?」
「どう感じた?」など、
具体的な質問にこたえることで、過去の記憶(長期記憶)のなかの「事実」を取り出しながら、視覚・聴覚・触覚といった多重的な情報を現在進行系で統合させ、エピソードバッファの機能である「繋ぎ合わせる(統合)」働きを使います。
もちろん、尋問のようなことはしなくて良いです。
お子さんの中にある「記憶」と「感覚」と「言葉」を引き出すようなやりとりを工夫してみましょう。
同様の考え方で、他にも、
物語や絵本の内容を自分の言葉で説明する作業を通して、例えば赤ずきんちゃんや人魚姫など、昔から知っているようなストーリーについて、ふとした時に、「それはどんな話?」と尋ねてみましょう。お子さんにとってもっと身近なアニメでももちろん良いですね。
思い出しながら、自分の中で組み立て説明する作業は、「エピソード」と「言語」と「イメージ」を頭の中で繋げてそれを表現する練習になります
掃除や手伝いなど、作業の手順を思い出しながら進める
学校などでは、何かをするときの手順が細かく決まっていたりしますね。
それは誰がやっても同じようにできて、「わかりやすいように」ということでもありますが、実はそうしたことも、覚えている情報を「一連のまとまり」として記憶から取り出し、「今行う作業」につなげていく作業になります。
作業のチャートがあって、それを実行に移すという習慣を学校の中で体験することも、実は目に見えないところで、大事な発達のプロセスに繋がっているのかも知れないですね。
他にも、より何気ない日常生活や家族の時間の中で、
例えば日々の会話にも、自分の中にある記憶や情報で「話を組み立てる」ことで、出来事を振り返り、「今日は何が楽しかった?」などと尋ねる何気ない会話にも、この頭の中の働きを刺激する意味があります。
絵日記を書くのも、一日の出来事を思い出して、情景を思い浮かべ、整理し、順序立てて表現する作業になります。絵日記を書くのはもしかすると夏休みくらいかも知れないですが、毎日取り組んでみてもいいですね。
他にも、写真を見ながら話すといったことでも、その時の出来事や状況、気持ちを思い出しながら説明することができます。
これらの本当に何気ないコミュニケーションも、「今ここ」の情報と、自分の中にある「過去の記憶」とをつなげ直す練習になっていきます。
それこそ、今回のトピックである「エピソードバッファ」を鍛える習慣に、実はなっているのですね。
こうした日々の、何気ない遊びや行動の中で、過去のエピソードを取り出して参考にする力が気がつかないうちに育まれているのかもしれません。
そうして何気ないことの中で、いつの間にか育まれたものが、「学習」「コミュニケーション」「課題解決」といった力の土台にもなっていきます。
そういったことを、会話や遊び、関わりの中で少しずつ意識していくのも良いかもしれませんね。
もちろん楽しく、ゆっくりと、草木が芽吹くのを待つような気持ちで🌱
皆さまの中にも、良い遊びや作業のアイデアが思い浮かびましたら、ぜひ感想でお寄せください📮
それでは次回の記事で、これまでに見た「音韻ループ」「視空間スケッチパッド」「エピソードバッファ」などの働きから得た情報についての注意を調整し、判断・選択する機能を担う「中央実行系」を使った遊びや作業についても考えていってみましょう!
次回更新は水曜日です✨
ここまでお読みいただきありがとうございます。
1月終盤、風が強く冷え込む日が多くなりましたが、皆さま温かくして、よく食べ、休みつつ、どうぞお元気にお過ごしください☘️
記事の参考・参照元リンク▼
ワーキングメモリ(記憶力)とは?発達障害との関係、IQ検査、治療法について | ブレインクリニック
ワーキングメモリを鍛える3つの方法|ゲームや遊びで子どもが楽しく鍛えられる方法をご紹介!
【子供の非認知能力・創造力を鍛えよう】「お話作り」は絶対おすすめ
【今回のブログの感想・ご意見はこちらから募集しています!】
無理して学校に行かせたくない。将来の選択肢をまもってあげたい。
どちらも、おなじくらい大事だと思うから。
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