学習塾ミチビキ

【スタッフのつぶやきvol.52】頭の中の情報を更新(アップデート)する ー〈シリーズ〉日常の中で「実行機能」を育む⑦ー



この記事では、お子さんの「行動」や「反応」、「学習」などの様子に関する

「なぜ?」「どうして?」について、
人間の心の理解」という観点から、機能や仕組みの基本的な知識に基づいた情報を発信していきます。

目に見えない「心」について知ることが、

この子の中で、何が起こっているのか

この子の世界には何が見えているのか

について考える土台を持つことにもつながります。

そしてその土台が、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。

 

 

こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。皆様いかがお過ごしでしょう。

2月も半ばとなりました。明日はバレンタインですね🍫

「実行機能が育つ遊びについて考えるシリーズ」も残り二つです。

 

これまで、実行機能の働きを担う「ワーキングメモリ(4つの要素)」と

「抑制」、それらを積極的に使った遊びについて考えて来ましたね。

 

それでは実行機能の残り二つ「更新」と「切り替え」の機能についても見ていきましょう。

 

頭の中で情報を書き換える「更新」―頭の中のメモ―

はじめに 「更新」とは?

まず、「更新(Updating)」という機能について考えてみましょう。

 これは文字通り、ワーキングメモリの中にある情報を、状況の変化に合わせて更新し、「最新のものに書き換える」機能です。

 

頭の中に、小さなホワイトボードやメモ帳があるとイメージします。

 そこには「今、覚えておくこと」が書かれているとします。

変化する状況に合わせて、情報を新しくする必要がある場面を思い浮かべてください。

脳内で情報がスムーズに書き換えられている時、私たちは次のような処理を行っています。

例えば、

 

暗算や計算問題(繰り上がり・繰り下がり)

 計算をする際、私たちは「一の位の計算結果」を一時的に覚え、十の位に繰り上がった瞬間に、前の数字を捨てて「新しい桁の数字」を記憶し直します。

古い数字(計算前の数)を消去し、計算後の新しい数字(答えや繰り上がり)に書き換えることで、この計算処理を行うことができます。

 

球技や鬼ごっこなどのスポーツ

 サッカーやドッジボール、鬼ごっこなどの遊びやスポーツも「更新」の連続です。

「あっちにボールが来た」「相手が右に動いたから、自分は左へ」と、刻一刻と変わる状況に合わせて、自分の動きのプランを瞬時に書き換えています。

「攻める」から、「守る」への変更も、これまでの状況に関する情報の更新ですね。

 

会話のキャッチボール

 相手の話を聞きながら、自分が次に言おうとしていたことを修正する場面です。

例えば、自分が「昨日の出来事についての話」をしようとしていたけれど、相手が「今日の授業の話」をしてきた時、状況への情報を更新し、用意していた話題を一旦止めて、相手の話に応答します。これは状況に対する情報の更新でもあり、これまでに見た抑制の機能でもありますね。

実際、これらのことは、これまでに見た実行機能やワーキングメモリといった機能の働きが重なり合うことで可能になっています。

 

例えば、以下のような様子が見られる時は、そうした「情報の更新」が瞬時に難しい状況が起こっている可能性もあります。

 

終わった話題を話し続ける(情報の消去不全) 

みんなで別の話題に移って盛り上がっているのに、一人だけ「でね、さっきの電車の話なんだけど…」と、延々と前の話題に戻ってしまうことがあります。

こうした時、もしかしたら頭の中で「さっきの話題」が消えず、新しい話題を上書きすることができていない状態なのかもしれません。

空気が読めない、コミュニケーションがうまくいかない、といった見られ方をしてしまうこともあるかもしれません。

そんな時、「自分が気になるから思いのまま話している」というより、実は「情報の書き換え」がうまくいってないのかもしれません。

 

 間違い直しで、また同じ間違いを書く(修正の不全)

何気ない場面ですが、 漢字や計算のミスを消しゴムで消して書き直して、でもまたさっきと同じ、間違った答えを書いてしまうといった時も、更新がうまくできない時です。頭の中には初めの情報のイメージが強く残っていて、更新されないんですね。

筆者も疲れている時にそうした間違いをした覚えがあります。

「わかっているのに間違える」と言われがちですが、これは不注意だけが原因ではなく、集中していても頭の中で情報を書き換える「更新」という機能が働くのに、何か負担がかかっているのかもしれません。

 

「やっぱり◯◯で」と後発の指示を出されると少し固まる(変更への対応)

例えば、「今日の移動はA教室です」と言われて「あ、間違えた!やっぱりB教室です」と訂正されると、それでもA教室に行こうとしたり、少し混乱したりパニックになる場合もあります。

最初に聞いた情報が固定され、新しい情報への書き換え(アップデート)処理が追いつかない状態ですね。

また、記憶機能には「初頭性効果」といって、一般的に初めの情報がより強く残る傾向があります。 

この時、古い情報から新しい情報に書き直し、メモを書き換えるのが「更新」です。

この機能がうまく働かないと、古い情報が頭に残り続けてしまったり、混乱してしまったりしますね。

 

情報を「更新」しながら楽しむ遊び

「更新」の力は、楽しみながら使うことで、どうやって頭の中の情報を書き換えていくのか、もちろん個人差があるものですが、感覚的に慣れていくこともできます。

 頭の中のホワイトボードを「書いて、消して、また書く」このサイクルをスムーズに行うような遊びについて考えてみましょう。

 

つみき式しりとり(お買い物ゲームなど)

普通のしりとりではなく、前の人が言った言葉を全部覚えて言っていく遊びです。

 

(例:りんご → りんご、ゴリラ → りんご、ゴリラ、ラッパ……)

 

この遊びの中で、脳はまさに以下のような複雑なプロセスを高速で行っています。

保持(Keep): これまでの単語リストを頭のホワイトボードに残しておく。

追加(Add): 新しい単語(ラッパ)をリストに書き加える。

照合(Check): 順番が合っているか、抜けていないかを確認する。

出力・再更新: 口に出して答え、さらに「次の人の番」に向けて、そのリストを最新の状態で保存し直す。

 

同じ要領で考えると「山手線ゲーム」も同様の作業を行う定番の遊びですね。「果物の名前」「赤いもの」など、お題を決めてリズムよく答えていく、お馴染みのゲームです。 実はこれも、「更新」機能をフル活用する高度な遊びです。

 

「一度出た言葉は言えない」というルールによって、頭の中の「既に出た言葉」のリストが更新されていきます。そのリストをチェック(照合)しながら、負けないように次の言葉を考えますよね。ゲームが進むにつれて「既に出た言葉のリスト」の情報はどんどん増えていきます。

ですから頻繁な「書き換え」 の操作が頭の中で必要になります。

 「あ、それさっき言った!」と気づけるのは、更新機能が働いている証拠です。

 

後出しジャンケン(指示出しver.)

他の実行機能を活性化させる遊びの記事でも登場しましたね!

通常のジャンケンは「勝つ」手を出すことが目的ですが、遊びの中でルール変更をすることで、情報の更新の練習もできます。

例えば、じゃんけん!ぽん!で出した手を、片方が「負けて」「勝って」「相子にして」というふうに指示を出すことで、頭の中で情報を更新し、それに対応した手をだす「切り替え」の練習にもなります。

 

クラップゲーム(特定の合図で手を叩く)

こちらも、英語圏のスクール等でも定番の遊びです。

例えば数字やアルファベットを順番に「1、2、3……「A、B 、C.......」と数字を唱えていきます。そして自分で決めた「6」や「F」などの特定の条件では、声に出さずに「手を叩く」など特別なアクションを加えます。他にも、「6の倍数でジャンプ」「Fでターン」といったように動きを加えてもいいですね。まるでゲームやパソコンのコマンドのようです。

失敗しても大丈夫な「遊び」という状況で、笑い合いながら取り組むことで、間違いへの耐性もつきます。

この「コマンド」に反応するというルールを活用した遊びで、より複雑ですが「サイレントフットボール」なんかも、道具がなくても楽しくみんなで遊べるゲームです。

 

遊び方のポイントとバリエーション

遊びを通して機能を活性化させる時、大切なのは「スピードや正解できることを求めすぎない」ことです。

スモールステップで

 最初は「保持」する情報の数を少なくしたり、指示を固定したりして、負担やハードルを下げましょう。「できた!」という感覚こそが、その機能の活動の働きをより活性化させます。

視覚情報の補助

 耳で聞くだけで「更新」の練習が難しい時は、指を使ったり、イラストを活用して、ワーキングメモリの負担を減らしながら、工夫して遊ぶこともできます。

 

日常生活での「更新」機能

遊びだけでなく、日常生活の中でも行っている何気ない「認知の更新」について考えてみましょう。

日常生活で行っている何気ない「更新」

料理

 「お湯を沸かしながら野菜を切る」

「お湯が沸いたら火を弱める」

「また野菜を切る」

といった、状況に応じた作業手順の切り替えも、認知の更新と行動の切り替えができるからこそ成立する一連の行為ですね

 

予定の変更

 「雨が降ってきたから、行き先を公園ではなく図書館にしよう」と、気持ちと行動を切り替える。

といったことも、認知・感情・行動の更新と切り替えを行っています。

 

小さい子だと、突然の予定変更に納得できなかったり、気持ちが追いつかないこともよくありますね。

もし、急な予定変更でパニックになったり、一つの話題にこだわり続けたりする様子がある時、「わがまま」とするよりも、「頭の中の予定表の書き換え(更新)」に時間がかかっていて、その子も大変な気持ちでいるというふうにみてあげると、声かけやできる関わりも変わって来ますね。

 

終わりに

「更新」が苦手なお子さんの頭の中では、古い情報が残り続けるといった特徴があります。

一度書いた文字が消えにくい油性ペンのようかもしれません。

そこに新しい情報を無理やり上書きしようとすると、頭の中のメモがぐしゃぐしゃっと真っ黒になり、混乱してしまいます。

 

そんな時、お子さんが気持ちが追いつかないまま、何かを「強制終了」されたり、「無視」されたと感じずに、「完了した」という安心を感じた上で、次の情報へ移りやすくする、優しい情報の更新の方法もあります。

 

「まずは、「今のお話」は一旦終わりにできる?」と声をかけてみたり、「そのお話、面白かったね。じゃあ、今の話はここにしまっておいて(...とポケットにしまう)、次のお話もできる?」とユーモラスに楽しく提案することもできます。これは筆者が実際にやってみて、小学生くらいの子が相手でも、笑って「いいよ!」と答えてくれた方法でした。

 

「ユーモア」や「冗談」ちょっとしたおふざけも、時にコミュニケーションを良いものにしてくれます。

 

また、視覚的なサポートも、非常に有効です。 

言葉だけでは難しい時、手振りや指さしなどの合図を使っても良いですね。

「はい、ここでおしまい!というときに、手で形を作ったり、広げた両手をパッタンと閉じる動作を筆者もボディランゲージとしてよく活用します。

 

それから、 変化についての予告をすることも、できる時にはしてあげるといいですね。 

状況に応じて、行動や認識をアップデートしたい時、急に新しい指示を出すのではなく、ワンクッション置いて、

「あと5分したら、今の遊びは終わりだよ。心(頭の中)の準備をしておいてね。」と声かけをしたり、急に情報が変わる時は、「さっきはAと言ったけれど、それは消して、Bに書き直せるかな?ごめんね」という、 「消して、書き直す」というプロセスの丁寧な言語化も、受け手の処理の負担を減らすことにつながります。

 

大人がその「心の中の見えない書き換えの時間」を作って待ってあげることは、お子さんが安心して、次のことをしていく大きなサポートになるはずです。

 

「更新」が苦手なのは、「一つのことを大切に覚え続けている力」というふうにも考えられます。

 

「どうして、できないの?」という眼差しが、「どう言えば伝わるかな?どうすればできるかな?」という視点になると、一つ一つの関わりや声掛けが、その子にとって必要な寄り添ったものになっていきます。 

 

Michibikiゼミでは、こうした心の特性を理解しながら、一人ひとりに合った学習や関わりのヒントをこれからもお届けしていきます。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

 

【今回のブログの感想・ご意見はこちらから募集しています!】

【Michibikiゼミ】ブログ感想フォーム

 

無理して学校に行かせたくない。将来の選択肢をまもってあげたい。

 

どちらも、おなじくらい大事だと思うから。

 

Michibikiゼミは、自立支援と進学支援のハイブリット型学習塾。

 

特性を持つ子どもたちのことを深く理解し、ペースも、教材も、学ぶ順序も、一人ひとりに合わせた学びを提供します。

 

授業についていけなくても、学校のルールがまもれなくても、じぶんに合った学び方さえできれば、勉強はできるようになる。可能性は広げられる。

 

わたしたちは、そう信じています。

 

【入塾相談・お問い合わせはこちら】

https://form.run/@michibiki

 

【入塾の有無に関わらないなんでも相談窓口はこちら】

https://forms.gle/6hAMgWBv9heHZ1zB9