
この記事では、お子さんの「行動」や「反応」、「学習」などの様子に関する
「なぜ?」「どうして?」について、
「人間の心の理解」という観点から、機能や仕組みの基本的な知識に基づいた情報を発信していきます。
目に見えない「心」について知ることが、
「この子の中で、何が起こっているのか」
「この子の世界には何が見えているのか」
について考える土台を持つことにもつながります。
そしてその土台が、たった一人の「その子」と関わりを築いていく、ふとしたヒントになるかもしれません。
こんにちは!Michibikiゼミの渡辺です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
新年度が始まり、進級や進学、新たな環境に歩み出した方も多くいらっしゃるでしょうか。
暖かい日と雨風の吹く日が忙しなく入れ替わり訪れているようにも感じます。
新たな環境や季節の移り変わりの中、皆さまどうぞ、お時間がある時は立ち止まりご自身の心や体の声にも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
さて、 今回の記事では「疲労」と「休息」について考えていきます。
保護者の方からいただくご相談のなかでも、「うちの子は疲れやすい」といったお声は多く耳にします。
また、 「好きなことをしている時は元気そう。でも、勉強の話になると『疲れた』と言う」。
あるいは、「限界まで我慢して、突然電池が切れたように動けなくなる(不登校など)」。
最近では、「休みなさいと言っても、動画を見ていて、脳が休まっていない気がする」
といったお子さんの様子を伺うことも非常に少なくありません。
本日はこれらの事柄について、「心の仕組み」の視点から考えてみましょう。
「疲れ」を「感じる」ことも、私たち人間に備わった大切な心の機能です。
心で、「自分の疲れに気づくセンサー」の仕組みが、疲れの「感じやすさ」あるいは、「感じにくさ」、「休めなさ」などにも関係しています。
「疲労と休養」に関する話題や書籍は近年とても増えたのではないでしょうか。
それほどに多くの人が「ずっと疲れている」感じや、「休めていない」感じを抱えているのかもしれません。
「『疲れ』に気づけない」という状態
私たちは普段、「お腹が空いた」「喉が渇いた」「体が重い」などの、「身体のサイン」をキャッチしながら、食事や休息をとります。
この、体の内側の状態を感じ取る能力を、心や脳の世界では「内受容感覚(Interoception)」とも呼びます。脳の中では、「島皮質(とうひしつ)」という場所が関わっています。
近年の研究では、発達に特性のあるお子さん(ASDやADHD傾向など)の多くが、この「内受容感覚」の働きに特異性を持っていることがわかってきました。
つまり、「疲れている」という信号が脳に届きにくいということです。
もし、残りのエネルギーを示すメーターの動作に問題があるまま車が走り続ければ、ガス欠になって車が動かなくなってしまいますね。それにとても危険です。
実は筆者の渡辺も、疲れが限界に達するまで自分の疲れに気がつかなかったり、時には疲れているのではなく「自分に甘いのではないか」と、無理をして走り続けてしまうことがしばしばあります。
限界に近づきはじめて、「もう無理だ」と気づくことで、心と身体の防波堤から疲れが溢れた時、突然の「爆発」や、「身体がいうことをきかなくなる(起立性調節障害のような症状を含む)」といった状態にも繋がっていきます。
「疲れを感じづらい」状態は、周りからも見えづらく、本人にとっても段々と辛い状況を作ってしまいやすいと言えます。
参考元▼
Craig, A. D. (2002),How do you feel? Interoception: the sense of the physiological condition of the body.
東郷史治ら (2020), 自閉スペクトラム症における内受容感覚の特異性,
「ゲーム」は休息になる?ー過集中、乖離、マスキングー
親御さまのお声の中で、「疲れたと言いながらゲームをずっとやっている」 という内容も実は多く耳にします。
脳科学的には、ゲームなどの刺激によって疲れを癒す行動を取ろうとすることは、「休息」というよりも「麻痺(まひ)」させている状態に近いといえます。
近年社会的にも注目されている「休養学」といったテーマでは、そうした疲れを麻痺させる行動は「マスキング(疲労感を一時的に隠す行為)」とも呼ばれています。
強い刺激(ゲームや動画)に没頭している時、脳内ではドーパミンといった報酬系の物質が刺激され分泌されると考えられます。
これにより、一時的に疲労感やストレスを感じなくなるのですね。
そうした状態のことを「過集中(Hyperfocus)」とも呼びます。体は疲弊しているのに、脳だけが覚醒している状態です。かつ、その習慣は、本人も「楽しいから元気だ」と錯覚しやすいです。
電源を切った瞬間に、先送りにしていただるさが一気に押し寄せ、ドッと落ち込んでしまうこともあります。元気の前借りのようなものかもしれませんね。
これは「サボり」ではなく、刺激がないと「自分を保てない」ほどエネルギーが枯渇しているサインとしても考えられます。
筆者も実は、疲れている時や嫌なことがあった時ほど、延々と見たくないスマホの画面を何度も見てしまい、余計に疲れてしまった経験があります。
そんな時は、情報から距離を置いて、ゆっくりと深呼吸しながら、今自分が感じていることを認めることが一番良いような気がします。
他にも、そうした「マスキング」には、甘いものや栄養ドリンク、カフェインやアルコールといったも刺激物の摂取も該当します。
疲れている時は甘いものが摂りたくなるし、頑張りたい時はカフェインを取り入れたくなりますよね。しかし、それが実は身体を労っているのではなく、疲れを紛らわせて、元気を一時的に前借りしている状態なのかもしれません。
実際にストレスの低減や回復をしているというよりは、「覆い隠す」ことで乗り切ろうとしてしまうのですね。
参考元▼
Ashinoff, B. K., & Abu-Akel, A. (2021). Hyperfocus: the forgotten frontier of attention. 依存と嗜癖の心理臨床, 廣中直行 (2018).
科学に基づく「正しい休み方」のヒント
では、「疲れ」を感じにくくても、どれだけ疲れているか、どれだけ休めばいいかを把握し、「上手に休息をとる」ためにはどうすればよいのでしょうか。
「意志」や「自覚」に頼る、といったことだけではなく、環境調整やちょっとした取り組みなどの工夫で、「外部からの仕組み」を作り、「疲れに気がつく」「上手に休む」ことをサポートすることもできます。
① 疲れを「見える化」する(外的モニタリング)
本人の、疲れに関する感覚だけではなく、「 客観的な指標」を共有してみましょう。
「体の状態」を言葉にすることも大切ですね。
例えば、
「体が硬くなってきたから休憩やストレッチをしよう(深呼吸も大切です)」
「集中して◯時間(◯分)経ったから、一度横になろう」
「今の体力」を数値で表す。
といったことを習慣的に行うことです。実は筆者もこれらを実践しています。
筆者も朝から疲れているタイプで、一度「疲れ」に関係しているものが何かを一度考えた時、私の場合は睡眠や食事よりも、「前の日の活動量」との関係がありそうだったので、こうした工夫を取り入れるようになりました。
このように、「疲れの感覚」ではなく「数値」や「時間」などの客観的な指標で見て判断・管理することは、疲れの予防、特に「疲れ果ててしまう」ことを避けるためにも、非常に効果的です。
② 「刺激のない時間」をあえて作る(感覚の遮断)
「疲れやすい」場合、目や耳から受け取る情報を処理するのに忙しく、常にオーバーヒートしていることもあります。
「何もしない」が苦手な場合は、少しの時間から「休む」ことに慣れたり、「ながら」でぼんやりする方法を見つけてみましょう。
タイマーで「3分だけ」「5分だけ」目を閉じて横になる
頭を使わないで(お風呂場に絵を貼るなどして)、なるべく湯船でぼんやりとして、少し長めに浸かる
重めの毛布にくるまることで、圧迫刺激をつくる
というふうに、物理的に情報を遮断しつつ、感覚的な刺激を計画的に取り入れるケア(センサリー・ダイエット)が、頭の中でアクセルがかかった状態を休ませてあげることに役立ちます。
そうした「ぼんやりしたい」時、よく選択される方法の一つに音楽がありますね。
しかし音楽も、種類によってはドーパミンの分泌を促し、「休息」を妨げることがあります。
けれど何もせず無音の状態でも、心の声が大きくなってきたり、ざわざわと不安になってくることはあります。
音楽家の故・坂本龍一さんは、あるインタビューの中で「理想の音は雨の音」と発言したことがあります。
体力がないと、音楽の熱量を受け止められない。そんな時、「雨の音」はちょうど良いのだそうです。これはとてもわかる気がします。
刺激をなくすだけではなく、「調整」することで、上手に付き合う方法もありそうですね。
参考元▼
理想の「音」は雨の音。音の自由を求め、原点へ──坂本龍一|WIRED.jp
坂本龍一さんが最期に聴いた音に耳を澄ませて 日記でたどるドキュメンタリー映画【クレッシェンド!】
感覚処理障害と感覚統合, A. Jean Ayres. 発達障害のある子の「感覚」の特性と支援, 岩永竜一郎 (2019).
さいごに
「休む」ということは、実は少しずつ身につけていく技術です。
「何に癒されるか」自然と気がつける人もいれば、自分が何に疲れ、何に癒され、回復していくのか気が付きづらい人もいます。
筆者もまさにその一人で、かつてはとにかくコーヒーをたくさん飲んだり、睡眠時間をあえて短くすることで過集中の状態を作り、「とにかく頑張る!」で課題を押し切ろうとしていました。
特に、お子さんでも、頑張り屋さんで、まだ自分の体力や心の容量の限界に気づきにくいお子さんたちにとっては、「休む」ことは勉強すること以上に難しい課題かもしれません。
しかし私たちの心と体は有限ですから、疲れた分は、休んであげないとすり減ってしまいます。
もしお子さんが、家で「ダラダラ」しているように見えたり、無気力に見える時、「疲れ」と「回復」のバロメーターが大人より見えづらい中で、バランスを取ろうとしていることを想像するだけでも、かけたい言葉、してあげられることも変わってくるかもしれません。
「今日は早めに休もうか」
「頑張りすぎなくても大丈夫だよ」
「また明日、続きをやろう」
そうした「休むきっかけ」をくれる言葉を大人からかけてもらうことが、「お守り」になるかもしれません。
大人の言葉は、種のように子どもの心の中に残ってふとした時に発芽し、自分から行動を変えられる鍵にもなります。
そうした声かけを大切にしながら、Michibikiゼミでは学習だけでなく、こうした「自分自身のコントロールの仕方」といった、学習の土台についても、一緒に考えていきます。
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どちらも、おなじくらい大事だと思うから。
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